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東京地方裁判所 昭和44年(借チ)2021号 決定 1969年4月14日

申立人 加賀谷ミユキ

相手方 海東土地建物合資会社

主文

別紙目録記載の借地権を申立人が目黒区碑文谷一丁目八番一九号杉野和幸に譲渡することを許可する。

理由

一、本件資料によれば、申立人は昭和二七年六月目黒区碑文谷一丁目一、一二七番の五宅地五五・二平方米(一六・七坪)を買受け、その地上に家屋番号一、一二七番の三木造亜鉛メツキ鋼板葺二階建居宅床面積三九・〇七平方米の建物を建築所有し、ここに居住することになつたがその頃右土地の西側にある相手方所有の本件土地(別紙目録記載)を右住居の通路として使用するため、相手方から賃借をした。ところで申立人は前記所有土地及び建物を杉野和幸に譲渡することとなつたが、右建物の利用上本件土地は通路として必要であるので、本件借地権を合わせて譲渡しなければならなくなつた。相手方はこれを承諾しないので、本申立てをしたものである。

二、右の事実によれば、本件借地権は専ら通路とする目的をもつものであるが、現状のもとでは前記の建物利用上必要不可欠と認められるので、借地法の適用を受ける非堅固建物の所有を目的とする借地権と解することができる。

三、申立人において譲渡しようとする建物は、申立人所有の土地上に存し、本件借地の上には跨つていない。そこで、右建物が法九条の二の第一項に定める「賃借権の目的である土地の上に存する建物」にあたるか否かが一応問題となるのであるが、前記のように申立人所有の土地と借地とが不可分に一体となつて建物の利用に供されている本件においては、右要件を充足するものと解するのが相当である。

なお、本件申立てに関しては、譲渡すべき建物は申立人の所有地上に存することから、相手方は法九条の二の第三項による申立ては認められない。土地賃貸人に建物の敷地について譲渡もしくは賃借権の設定を求める申立権は認められていないからである。しかし、このことは借地法の趣旨からみて同条第一項の申立権を排除する理由とはならないと解する。

四、本件借地権の譲渡が相手方に不利益を与えることを示すような事情はみあたらない。

以上により、本件申立てはこれを許可するのを相当と認める。よつて、主文のとおり決定する。

(裁判官 西村宏一)

別紙目録

借地権の内容

一 目的土地 目黒区碑文谷一丁目一、一二七番三号、一七三・二二平方米のうち東側九、〇九平方米(現に通路として使用されている部分)

二 借地契約

1 成立 昭和二七年三月

2 目的 非堅固建物所有の目的(但し、通路としてのみ使用する)

3 期間 定めなし

4 賃料 一ケ月二〇〇円

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